SBTi基準が全面改定
連日厳しい暑さが続いておりますが、皆様の工場・事業所では熱中症対策や空調負荷の増加への対応はいかがでしょうか。
今回は、企業の脱炭素目標の国際的な評価基準を運営する「SBTイニシアチブ(SBTi)」が公表した基準改定の最終版について、日経GXの解説記事をもとにまとめてご紹介します。
SBTi認定を取得すると、取引先や金融機関などの外部ステークホルダーに対し「環境貢献企業」であることを分かりやすくアピールできます。
まだ認定を取得されていない中堅中小企業の皆様にとっても経営戦略上のメリットが大きいテーマですので、ぜひ最後までご覧ください。
SBTi基準が全面改定 中堅中小企業にも影響する変更点とは
■ SBTiとは
SBTi(サイエンス・ベースド・ターゲッツ・イニシアチブ)は、企業が掲げる温暖化ガス(GHG)削減目標を、パリ協定の1.5度目標などの科学的知見に沿っているかどうかで評価・認定する国際団体です。
日本ではすでに2500社を超える企業が認定取得・参加表明をしており、その数は世界最大となっています。
東証プライム上場企業でも約2割が参加しており、認定企業と取引のある中堅中小企業にとっても無関係ではないテーマです。
■ 最終版の全体像
SBTiは2026年6月11日、新しい評価基準「SBTi Corporate Net-Zero Standard Version 2.0」を公表しました。
2025年3月の改定案公表から1年以上、産業界との対話を重ねた末の最終版です。新基準の適用は2028年2月1日から必須となり、2027年2月1日以降は現行基準と新基準のどちらかを選べる移行期間が設けられます。
■ 変更点① 長期目標は任意、5年ごとの短期目標が中心に
これまで必須とされてきた2050年前後を見据えた長期目標の設定が任意となり、5年以内の短期目標の設定のみが必須となりました。
5年ごとに目標を更新しながら認定を継続する仕組みで、達成できなかった場合でも「十分な努力をした上でできなかった理由」を説明できれば、次の目標設定に進める運用(ベスト・エフォート・ベーシス)に改められています。
自社の努力が及ばない外部要因(制度変更や災害など)による未達を、一律に「失敗」として扱わない配慮といえます。
■ 変更点② スコープ1・2は「実際の排出量」を重視
スコープ1(自社の直接排出)は、燃料の環境証書購入による相殺が認められなくなり、実際の排出削減が求められます。
スコープ2(購入電力による間接排出)も、地域の平均排出係数を使う「ロケーション基準」の実排出量を基本としつつ、電力契約に基づく「マーケット基準」に近い低炭素電力調達目標も選択可能です。
また、低炭素電源として認められる要件(追加性)は、稼働から「10年以内」という当初案から「15年以内」に緩和され、他の国際基準との整合が図られました。
スコープ1の実排出削減が一段と重視される中、ほっとコンサルティングはスコープ1削減のプロフェッショナルとして、廃熱回収、ヒートポンプ導入、燃料転換(重油・灯油からガス・電化への転換など)による削減で多くの支援実績があります。
設備更新を伴う具体的な削減策のご相談も承っております。
■ 変更点③ スコープ3は柔軟な運用ルールに
サプライチェーン全体の排出量「スコープ3」については、全カテゴリーの合計に対して5%以上を占めるカテゴリーを目標設定の対象とし、従業員の通勤や委託先の下流輸送など、自社の管理が及ばないカテゴリーは理由を示せば除外できるようになりました。
また、低炭素な原材料(低炭素鉄など)の調達比率を目標にできる「アライメント目標」も新設。マスバランス方式を活用できますが、環境価値を一部の製品に過度に集中させる「カーボンバンクモデル」的な運用は明確に禁止されています。
■ 変更点④ 経営トップの承認とガバナンス強化
移行計画は、サステナビリティー部門の承認だけでなく、取締役会など企業の最高統治機関の承認を得ることが新たに求められます。あわせて、脱炭素の移行計画と事業戦略との整合性も求められるようになり、脱炭素目標を経営課題として位置づける動きが一段と強まりそうです。
大企業を中心とした「カテゴリーA」企業には、目標達成状況について第三者による限定的保証(third-party assurance)の取得も求められます。
■ SBTiトップのコメント
SBTiのデービッド・ケネディCEOは日経GXの取材に対し、「野心的な目標設定だけでは変化は起きない。重要なのは実際にその達成に向けて取り組み、事業を変革していくことだ」と述べ、今回の改定が目標設定から実行・行動へと重心を移すものであることを強調しています。
また、日本企業について「将来の競争力を確保するための準備を確実に進めている」と評価し、日本の再エネ比率目標(2040年度に40〜50%)にも理解を示しました。
■ 中堅中小企業への示唆
SBTi認定企業と直接取引のない中堅中小企業であっても、サプライチェーンの一員として、取引先の大企業からスコープ3排出量データの提供や低炭素製品の調達を求められる場面は今後も増えていくと考えられます。
今回の改定でスコープ3の目標設定に柔軟性が加わったことは、大企業側の要請の仕方にも変化をもたらす可能性があります。取引先の目標設定の動向を把握しておくことは、今後の受注や取引条件を見据えるうえでも有用です。
ほっとコンサルティングでは、これまでに中小企業版SBTi認定取得の支援実績が7件あり、大手コンサルティングファームに比べて安価な費用で、認定取得まで伴走支援いたします。SBTi対応をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。
下記の記事をもとにまとめを作成しました。
・改定SBTiの最終版を解説㊤ 目標設定、5年後のみ必須に(2026年6月26日)
・改定SBTiの最終版を解説㊦ スコープ3、柔軟な運用ルール(2026年6月29日)
・SBTiトップ「目標だけでは変化おきず」 実行重視の新基準(2026年7月10日)
▼関連ブログ記事:中小企業版SBT2025改定のポイントと申請のコツについて



