脱炭素しないと融資が不利に?銀行が中小企業に求め始めたこと
脱炭素しないと融資が不利に?銀行が中小企業に求め始めたこと
「最近、銀行の担当者から脱炭素の話が出てきた…」
そんな経験をされた製造業の社長・工場長が増えています。
実は今、地方銀行・信用金庫レベルまで含めて、中小企業への融資審査と脱炭素への取り組みが直結し始めています。大手銀行だけの話ではありません。
この記事では、なぜ銀行が脱炭素を気にし始めたのか、地方銀行のESG融資の実態、そして製造業の中小企業経営者が今すぐ取るべき行動を具体的に解説します。
まずは動画でポイントを確認してください👇
1.なぜ今、銀行が脱炭素を気にするのか?
GX推進法(2023年)が銀行業界を動かした
2023年に成立した**GX推進法(脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律)**をご存じでしょうか。
この法律により、今後10年間で官民合わせて150兆円というGX投資が計画されています。政府予算だけで20兆円、それを呼び水に民間から130兆円を引き出す壮大な計画です。
この流れの中で、地域の金融機関もGX推進の担い手として位置づけられています。銀行自身が、融資先企業の脱炭素対応を評価・支援する役割を求められているのです。
サプライチェーン圧力が「融資リスク」に直結する
もう一つの背景が、大企業によるサプライチェーン全体へのCO2削減要求です。
トヨタ・パナソニック・日立などの大手製造業は、Scope3(サプライチェーン全体のCO2排出量)の削減義務を負っています。そのため、中小企業サプライヤーに対して「CO2データを出してほしい」「削減計画を示してほしい」という要請が急増しています。
銀行はこの構造を正確に見ています。
「脱炭素に対応できない中小企業は、取引先から外されるリスクがある。つまり売上が減る可能性がある。それは融資リスクだ」
こうした視点で、融資先企業の脱炭素対応を評価し始めているのです。
2.地方銀行のESG融資・金利優遇 実態はどうなっているか?
「ESG融資は大手銀行だけの話でしょ」と思っていませんか?実はすでに地方銀行・信用金庫レベルまで急速に広がっています。
静岡銀行:ESGファイナンス評価型融資
脱炭素への取り組みをスコアリング評価し、取り組みが優れた企業ほど金利が優遇される融資商品です。省エネ設備投資やCO2削減目標の設定、中小企業版SBT(Science Based Targets)取得がプラス評価されます。
北陸銀行:サステナビリティ・リンク・ローン
事前に設定したCO2削減目標の達成度によって融資金利が変動する仕組みです。目標を達成すれば金利が下がり、未達成の場合は金利が上がる条件が設定されています。自社のCO2算定(Scope1・2)が前提条件となります。
肥後銀行:グリーンサポートローン
省エネ・再エネ設備投資に特化した融資商品で、省エネ補助金との併用も可能です。地元中小企業向けにESG専任担当者が対応する体制を整えており、地方の製造業にとって特に使いやすい商品です。
取り組む企業と取り組まない企業の差が開く
| 取り組む企業 | 取り組まない企業 | |
|---|---|---|
| 融資審査 | プラス評価 | リスク企業と評価される可能性 |
| 金利 | 優遇の対象 | 優遇の対象外 |
| 取引先との関係 | サプライチェーン維持・強化 | 除外されるリスク |
| 補助金 | 活用で投資コスト圧縮 | フルコスト負担 |
脱炭素への取り組みが「融資条件」と「取引先関係」の両方を左右する時代が来ています。
3.製造業の中小企業が今すぐできる3つの対策
「脱炭素と言っても何から手をつければいいかわからない」という声をよく聞きます。実は、最初の一歩はそれほど難しくありません。
対策① 自社のCO2排出量を把握する(GHG算定)
まず取り組むべきは現状把握です。電気・ガスの使用明細があれば、Scope1(燃料の直接燃焼)とScope2(購入電力)のCO2排出量は概算できます。
専門家に依頼すればヒアリングシート1枚から2〜3時間で概算値が出ます。
この数字を持っていることが、銀行交渉・補助金申請・取引先対応すべての基礎になります。まず「知ること」が脱炭素の第一歩です。
対策② 銀行担当者に取り組みを積極的に伝える
CO2算定に取り組んでいること、削減計画を立てていることを銀行の担当者に伝えましょう。「脱炭素に取り組んでいます」と伝えるだけで、担当者の見方が変わります。
確認すべきポイントは以下の2点です。
- ESG融資・グリーンローンの商品があるか
- ESG専任担当者がいるか
地方銀行・信用金庫でもESG担当を設置するケースが増えています。既存の融資を切り替えるだけで金利が下がる可能性もあります。まずは相談してみることが重要です。
対策③ 省エネ補助金を活用して設備投資コストを下げる
「脱炭素のための設備投資はコストがかかる」というイメージがありますが、省エネ補助金を使えば初期投資の1/3〜2/3が補助されます。
令和8年度(2026年)の経済産業省・省エネルギー投資促進支援事業の規模は約2,450億円と非常に大きく、採択率は**70〜90%**と高水準です。
特に製造業の中小企業に関係する主な類型は以下の通りです。
Ⅰ型(工場事業場型) 中小企業投資促進枠
- 補助率:1/2(中小企業)
- 上限額:15億円(複数年度は30億円)
- 要件:省エネ率7%以上、省エネ量500kL以上など
Ⅲ型(設備単位型)
- 高効率空調・ヒートポンプ・工作機械・プレス機など単体設備の更新
- 補助率:1/3
- 上限額:1億円
さらに2026年は3か年集中支援の最終年となります。この規模の補助金が続くかどうかは不透明であり、今年が最大のチャンスとも言えます。
4.準備のポイント:加点要素を早めに押さえる
補助金の採択率を上げるために、加点要素を早めに準備することが重要です。
- 経営力向上計画:認定支援機関が策定支援。加点になるほか、**優遇税制(即時償却・税額控除)**の対象にもなり節税効果があります。
- 公的省エネ診断:国・都道府県が実施する省エネ診断を受診することで加点になります。
- CO2削減計画書:自社のCO2削減ロードマップを策定しておくと、申請書の質が大きく上がります。
春〜秋の申請シーズンに間に合わせるには、今から動き出すことが不可欠です。
5.よくある質問
Q. 脱炭素の取り組みはどこに相談すればよいですか?
省エネ・脱炭素の専門コンサルタント、または認定支援機関に相談することをお勧めします。補助金申請・CO2算定・設備導入支援をワンストップで対応できる会社を選ぶと効率的です。
Q. 中小企業でも本当にESG融資を受けられますか?
はい。地方銀行・信用金庫でも中小企業向けのESG融資が広がっています。まずCO2算定に取り組み、その実績を銀行に示すことが第一歩です。
Q. 省エネ補助金の申請は難しいですか?
Ⅰ型(工場事業場型)は申請書の作成に専門知識が必要です。省エネ技術の知識を持つ専門家・申請支援会社のサポートを受けることで、採択率が大きく上がります。
まとめ:脱炭素は「コスト」ではなく「経営の武器」になる
今や脱炭素への取り組みは、環境問題だけの話ではありません。
- 銀行との関係(融資条件・金利の優遇)
- 大手取引先との関係(サプライチェーン維持)
- 補助金の獲得(設備投資コストの圧縮)
- 税制優遇(節税効果)
これらすべてに直結する経営戦略の中核となっています。
「難しそう」「まだ先の話」と後回しにするほど、取り組んでいる競合他社との差が開いていきます。
まずCO2排出量を把握する。それだけで、脱炭素経営の第一歩が踏み出せます。
動画でもわかりやすく解説していますので、ぜひご覧ください。
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