日本の脱炭素方向性 ~どのようなCO2削減対策が正しいのか?~
カーボンニュートラル、脱炭素。
2030年、2050年に向けて、そのスピードは増すばかりです。
工場やビルでCO2削減を実行していく立場の方は、その対策を検討する際に、正しい方向や正しい手法を選択する必要があります。
ただ、自分で検討したり情報をとっても、それが正しい方向性かどうかは分からないのではないでしょうか。
日本政府のカーボンニュートラル・脱炭素のこれまでの取組を把握することで、その方向性が理解できます。
こちらの記事では、日本の脱炭素の方向性について解説します。
最後まで読んでいただくことで、今どのようなCO2削減対策を講じなければいけないのか?理解できます。
日本の脱炭素は3つの取組から
環境省の「長期低炭素ビジョン」には、政府が推進する3つの方針が示されています。
①エネルギー消費量の削減
②エネルギーの低炭素化
③利用エネルギーの転換
①エネルギー消費量の削減は、いわゆる省エネのこと。
従来の省エネを徹底的に実施することが、脱炭素の前提条件です。
②エネルギーの低炭素化は、炭素(CO2)排出の少ないエネルギーへのシフト。
電気ならば、火力発電等の購入電力から、太陽光発電に切り替える。
熱ならば、重油から都市ガスに燃転する。バイオマスや水素などの再エネ燃料に切り替えることです。
③利用エネルギーの転換は、CO2排出の多い化石燃料からCO2排出の少ない電気へのシフト。
自動車で言えば、ガソリン車からハイブリッド車、電気自動車に転換すること。
熱で言えば、油・ガス焚きのボイラーから、電気で動くヒートポンプに転換することです。
ヒートポンプで使用する電気を、太陽光発電等のCO2ゼロ電気を使用することで、ヒートポンプがつくる熱もCO2ゼロになります。
エネルギーごと脱炭素の対策メニュー
資源エネルギー庁の資料では、電力と熱の脱炭素の対策メニューが記載されています。
電気は再エネの導入
太陽光発電や風力発電の導入ですね。
熱は電化
ヒートポンプ等の導入です。
太陽光発電もヒートポンプも技術的に確立された、最も現実的なCO2削減手段です。
将来的には、イノベーション待ちの部分もありますが、電気・熱共に水素やアンモニア等のグリーンエネルギーへのシフトが記載されています。
脱炭素の取組順番
これらの日本政府の脱炭素推進資料から分かることは、まず省エネ。続いて技術的に確立された費用対効果の良い「太陽光発電」「ヒートポンプ」の導入。
そして、それでもCO2を削減しきれなかった部分は、将来的に水素等のグリーンエネルギー導入やCO2クレジットの購入です。
電気:省エネ ⇒ 再エネ導入 ⇒ 環境価値購入
熱: 省エネ ⇒ 熱の電化(ヒートポンプ) ⇒ 水素
改正省エネ法
2023年4月に施行予定の改正省エネ法。
ここに最新の日本の脱炭素方向性が記載されています。
改正の概要は、以下の3つ。
①対象範囲がすべてのエネルギーの使用の合理化となる
②非化石エネルギーへの転換の促進
③製造プロセスの電化・水素化の促進
まさに、太陽光発電等の再エネ導入と、ヒートポンプ等の電化、再エネ電源で製造する水素での水素化が、日本の脱炭素方向性なのです。
改正省エネ法から分かる脱炭素の方向性
改正省エネ法から分かる、脱炭素の方向性をまとめると、
電力 ⇒ 太陽光発電(+蓄電池)
熱 ⇒ 電化(ヒートポンプ)+水素化
技術的に確立された投資回収の良い「太陽光発電」「ヒートポンプ」を、今、最大限に導入し、それでも残ったCO2部分は環境価値(CO2クレジットやグリーン電力)を購入するのが正解です。
脱炭素の順番
日本の脱炭素方向性を時間軸でまとめます。
これまでは、省エネの徹底を徹底してきた。
これは引き続き徹底して継続していく必要があります。
省エネが不十分な事業者はまずは省エネですね。
つづいて、エネルギーの低炭素化です。
省エネで使用するエネルギーを減らし、減らしたエネルギーのCO2排出係数を低減させる。
電気は太陽光発電等の再エネの導入。
熱はヒートポンプ等の電化の導入。燃転の実施。
ヒートポンプで使用する電気を、太陽光発電等のCO2ゼロ電気を使用することで、ヒートポンプがつくる熱もCO2ゼロになります。
そして最後に、それでも減らし切らなかったCO2部分について、CO2クレジット等の環境価値の購入。
将来的にはイノベーションが必要な水素・アンモニアの活用なのです。
再エネ(太陽光発電)+電化(ヒートポンプ)+水素化
この3つの脱炭素対策は、お互いの弱みを補完し、強みのシナジー効果を得られる最強の組み合わせです。
正しい脱炭素の方向性を理解したうえで、自社に最適なCO2削減方法を検討してくださいね。
動画リンク
●一般社団法人日本エレクトロヒートセンター主催の「カーボンニュートラル支援講座」講演動画で、記事の内容を解説しています。是非ご覧ください。
2023.2.21開催