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廃熱回収省エネセミナー2 業界ごとの検討(食品・医薬品・印刷)

工場の廃熱回収省エネセミナー2回目は、業界ごとの廃熱回収省エネ検討についてです。

1回目のセミナーでは導入可能性判断と調査のポイントを説明しましたが、今回は業界ごとに更に詳細な検討ポイントについて説明します。

廃熱回収ヒートポンプを使用した廃熱回収検討では、
化石燃料(蒸気も)で加熱しているプロセスと、
廃熱を捨てている もしくは 冷水を作っている(廃熱処理している)
の2か所があれば可能です。

今回は下記業界について説明します。

  1. 食品工場の廃熱回収省エネ
  2. 医薬品工場の廃熱回収省エネ
  3. 印刷工場の廃熱回収省エネ
目次

1.食品工場の廃熱回収省エネ

食品工場も製造している製品によって多様な廃熱回収形態がありますが、製品種類を大別すると以下の通りです。

  • 飲料系(ソフトドリンク、牛乳等)
  • 保存食系(缶詰、レトルト等)
  • 素材系(砂糖、塩、コーンスターチ等)
  • 麺類系(茹で蒸し麺、インスタント麺等)
  • 調味料系(醤油、味噌、みりん等)
  • 総菜系(弁当、総菜等)
  • 焼き揚げ物系(パン・菓子等)

この中で、比較的廃熱回収に向いている業種について説明します。

飲料系の大まかな製造工程は、「調合」「殺菌」「充填」です。

主なエネルギーの使用工程は「殺菌」。製品を一定の温度・時間加熱して殺菌します。方式は熱交換器で行うものと温水シャワーで行うもの等があり、加熱源として有効です。いずれにしろ蒸気で温水を作り、殺菌後には排温水として排出されます。この排温水は廃熱源として有効です。

また、「殺菌」以外では「洗浄」用の温水でエネルギーを使っています。飲料系工場での「洗浄」は主にCIP(定置洗浄)洗浄を行います。酸・アルカリの洗浄液とすすぎ用の温水共に、蒸気で加熱しています。

一方で、「殺菌」工程の前後で製品を冷却します。チラーで冷水やブラインを製造し、製品を熱交換器で冷却します。このチラーで製品を冷やす工程は、製品から熱を奪いチラーから大気に熱を廃棄します。つまり、「廃熱がチラーから発生している」、「チラーが廃熱を処理している」ということです。よって、チラーも廃熱源として有効です。

冷水・ブラインから廃熱回収する方法は、冷却工程からの戻り配管(ぬるまった液体)から熱を回収します。具体的には7-12℃のチラー系統ならば、冷却工程からの戻り配管(12℃)から5℃の廃熱を奪えます。これによりチラーは負荷が減り停止するので省エネになります。奪った5℃を廃熱回収ヒートポンプで60℃の温水を製造すれば、冷水省エネと温水省エネが同時に可能です。

保存食系の加熱工程に「殺菌窯」があります。製品を窯に入れて、蒸気を吹き込んで殺菌を行います。殺菌終了後に吹き込んだ蒸気が排温水となって排出されますが、排温水の水質も良好で廃熱源として有効です。排熱回収ヒートポンプで再加熱することで、蒸気ボイラーの給水を加熱する等ができます。ただし、殺菌窯はバッチ式生産のため、加熱と排温水排出が断続的に発生します。そのため、1台の殺菌窯では廃熱回収が連続で行えないため、複数の殺菌窯がある場合に有効になります。

素材系では、特に砂糖や甘味料、粉調味料・スープ、コーンスターチ等を製造する際に、「スプレードライヤー」で液体から粉体を製造します。

スプレードライヤーでは蒸気などで製造した熱風で乾燥を行っていますが、この熱風は加熱源として有効です。廃熱源はスプレードライヤー排気が有効です。排気に熱交換器を設置し、低温水を製造してヒートポンプ熱源水として使用します。廃熱回収ヒートポンプは直接60~120℃の熱風を作れる機器があるので、乾燥プロセスには相性が良いです。

麺類系では、茹で麺製造工程において、お湯で麺をゆでた後に冷水で麺を引き締めます。麺の引き締めに利用する冷水から廃熱を回収し、廃熱回収ヒートポンプでお湯を作り、茹で工程に供給することで、お湯と冷水の同時省エネも可能です。茹で麺工程の廃熱回収は、温水・冷水中に固形物等の汚れがあるので、汚れに強い熱交換器を介して廃熱回収・加熱します。

調味料系は混合調味料と発酵調味料2種類に分けられます。混合調味料はドレッシングやタレ等で、エネルギーの使い方は先述の飲料系と同じになります。発酵調味料は醤油・味噌・みりん等で、原材料を発酵する際に温水や暖房を使用します。発酵が始まると原材料から発酵熱が発生するので、発酵熱を除去するために冷水や冷房を使います。このため、発酵熱除去用の冷水・冷房から廃熱を回収し、発酵開始用の温水・暖房を廃熱回収ヒートポンプで加熱することができます。冷水・冷房と温水・暖房の同時省エネが可能です。

業種共通になりますが、食品工場内は年間通して暑い部屋が結構あります。この部屋の熱気も廃熱源になります。暑い部屋に空気熱源式廃熱回収ヒートポンプの室外機を設置します。室外機で暑い部屋の空気から廃熱を回収するので、暑い部屋を冷房するのと同じ意味があります。部屋が冷却されるので、冷房の省エネや作業環境の改善が図れます。空気熱源式廃熱回収ヒートポンプでは、温水や熱風が作れます。給湯や乾燥の省エネに利用することができます。

2.医薬品工場の廃熱回収省エネ

医薬品工場はクリーンルームで製品を製造します。クリーンルームは空気の清浄度を保つのと併せて一定の温度・湿度も保つ必要があります。一定の温湿度空気を空調機で作るのですが、その際に除湿用の冷水と再加熱用の温水を同時に使用します。このため、医薬品製造工場では、空調用の冷水と温水を大量に使用しています。

廃熱回収ヒートポンプの導入は、冷水からの廃熱回収と温水への加熱の組み合わせとなります。一般的に温水負荷のほうが少ないので、温水負荷の量や発生タイミングを運転データ等から把握し、廃熱回収ヒートポンプの容量選定を行います。

また、クリーンルームは清浄度を保つためにほぼ365日空調機を運転します。そのため、廃熱回収ヒートポンプの稼働時間も非常に長くなり、投資対効果が高くなります。

3.印刷工場の廃熱回収省エネ

印刷・塗工工場は印刷するものの違いで印刷機の種類が変わります。一般的には紙印刷はオフセット印刷機、食品等の包装材はグラビア印刷機、機能性フィルム等はコーター・ラミネーターです。この中で、廃熱回収に適しているのは、グラビア印刷機、コーター、ラミネーターです。

これらの印刷機は、プラスチックフィルム等の材料に油性のインキや材料を塗り、その後熱風で乾燥します。乾燥器では一般的に50~100℃程度の熱風で乾燥しており、蒸気ヒーターやガスバーナーで熱風を製造します。

また、乾燥後の排気は有害な溶剤成分を含むため、環境装置(RTOなどの脱臭装置や溶剤回収装置)で無害化して大気に放出しています。これらの環境装置前後の排気ガスは一定の温度があるため、廃熱源として有効です。熱交換器を設置することで廃熱回収省エネが可能です。

排ガスから回収した廃熱を廃熱回収ヒートポンプで再加熱し、印刷機乾燥器に供給することで乾燥の省エネが可能です。廃熱回収ヒートポンプの廃熱源は20~40℃程度あれば十分なため、低温の排気ガスからも廃熱回収省エネが可能です。

また、製造室内の温度が高い場合は、室内の廃熱を回収する方法もあります。

これらの印刷機は一般的に24時間稼働を行っている場合が多く、廃熱回収システム導入の費用対効果は高くなります。

また、印刷工場では40~50℃程度のエージングルームがあり、現状は電気や蒸気で加熱していますが、空気熱源式廃熱回収ヒートポンプで簡単に省エネが可能です。

3つの業界での廃熱回収省エネの検討について説明してきましたが、これ以外にも廃熱回収省エネは可能です。

詳細の検討は専門家でないと難易度が高いので、専門の業者へ検討をお願いしたほうが良いと思います。

私も調査から提案まで実施してますので、興味ある方は「お問い合わせフォーム」から相談下さい。

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